国際詐欺(419事件)

当社宛にナイジェリア国営石油公社のサミー・エズ博士と名乗る人物からメールが届いたことがあります。

内容は以下の通り、(一部修正)


>From the desk of: DR. SAMMY EZE
Tel No: Your Intl. Access Code + 電話番号
Fax No: Your Intl. Access Code + FAX番号
Lagos, Nigeria.
Dear Sir,

REQUEST FOR AN URGENT CONFIDENTIAL BUSINESS RELATIONSHIP

After due deliberation with my colleagues, I have decided to forward to you
this business proposal. We want a reliable person whocould assist us to
transfer the sum of Twenty Million, Five Hundred
Thousand United States Dollars ( $20,500,000 ) into his / her account.

This fund resulted from an over-invoiced bill from contracts awarded by us
under the budget allocation to my Ministry and this bill has been approved
for payment by the concerned Ministries. The contract has since been
executed, commissioned and the contractor was paid the actual cost of the
contract. We are left with the balance US$20.5M as part of the over-invoiced
amount which we have deliberated over estimated for our own use. But under
our protocol division, civil servants are forbidden to operate or own foreign
accounts. This is why I am contacting you to be our custodian for this fund.

As you may want to know and to make you less curios, I got your address from
adverts in the business directory that portrayed your establishment in good
light. I am the Chief Accountant/Internal Auditor of the Contract Award
Committee ( CAC ) of the Nigerian National Petroleum Corporation ( NNPC).
This transaction is very much free from all sorts of RISKS and TROUBLE from
my Government. We the N.N.P.C. Officials involved in this deal have put in
many years in service to this Ministry. We have been exercising patience for
this opportunity for so long and to most of us this is a life time opportunity
we cannot afford to miss.

We have agreed to COMPENSATE you duly if agreement is reached by both of us
and I and one of my colleagues involved in this deal will come to your
country to arrange for our share, upon the confirmation from you that the
money has been credited into your nominated bank account.

Consequent upon your acceptance of this proposal, kindly confirm your
interest by Telephone to me, through my Direct Tel No: +873-762-692484.
(Please Call Direct, do not add my country and City code) . Your indication
by revert Telephone to me of your sincere and serious interest will enable
me fax you the PROCEDURE FOR OPERATION. If my line is busy, please keep
trying you will surely get through. NOTE: In the event of your inability to handle this
transaction please inform us so that we can look for another reliable person who
can assist in this respect.

It might surprise you why we choose you and trusted you for this transaction.
Yes, we believe that good friends can be discovered and business like this can not
be realised without trust. This is why we have decided to trust you for this transaction.
We are looking forward to doing this transaction with you. Be further informed that
everyone's interest and security had been considered before you were contacted,
so be rest assured and feel free to go into this transaction with us.
But let Honesty and Trust be our watchword throughout this transaction and your
prompt reply will be highly appreciated. Thank you, and God bless.
Best Regards,

DR. SAMMY EZE.


要約すると、

私はナイジェリアのN・N・P・C(国営石油公社)で対外交渉の役員を務めるサミー・エズです。
これまでの石油取引で紹介料などの名目で受け取り、私個人で自由にできる2050万ドル(約25億円)があり、管理に困っています。調査・検討した結果、貴社(ケーシーエム)に輸送と管理の全般をコーディネートしてもらいたいと考えています。
貴社のことは信頼できる友人から紹介で知り、連絡しました。
興味をお持ちなら、こちらのプランの詳細をお知らせしますので連絡してください。

大変に魅力的な内容のメールで興味をそそられますが、結果から先に言うと新手の国際詐欺です。
それなりの商用英語で、ルールにも法っていますが、

「信頼できる友人からの紹介で・・・」と書かれていますが、当社に海外の同業者と取引があるのは確かです。しかし素性を知らない資産家より先に、紹介者から当社に「どこの誰に紹介した。連絡しろ」との通知が届くシステムになっています。こちらから依頼者に連絡することはあっても、いきなり25億円もの現金を運べなどと依頼者から先に連絡してくることはありません
連絡先のメールアドレスがヤフー(アメリカ)のフリーアドレスであること

などなど、怪しい点も多数あったため調査し、詐欺と判断。無視しました。

「興味がある、そちらのプランを教えろ」などと返事をすると

本格的な輸送管理プランの提示
料金の決定については貴社に任せるが、こちらとしては輸送管理していただく金額の30〜40%(なんと10億円)を支払う準備がある
信頼していないわけではないが、信用保証金として2500万円程度を指定口座まで振り込んでほしい
近々、日本のエージェントから連絡させ、直接ミーティングの席を設ける

などのアクションがあるはずです。
その後に日本語が堪能でパリっとした装いのエージェント(正体は、詐欺団の手先の不法就労者)の甘言にコロっと騙され、信用保証金を振り込んだ直後にサミーエズ博士と彼のエージェント人が地球上から姿を消し、泣き寝入ると言う結果に終わったことでしょう。

この類の国際詐欺は、91年ごろから頻発しており、同じような内容の手紙(当時はメールが一般的ではなかった)に飛びついた日本の銀行などが被害にあったようです。
被害は、信用保証金名目の金銭を騙し取られるだけでなく、返事の手紙のレターヘッドをナイジェリア版「蛇頭」が悪用して就労ビザを勝手に取り、知らないうちに不法就労や不法入国の片棒を担がされるなど、広範囲に及んでいます。

手紙に食いついた「とある実業家」が、契約のためにナイジェリアまで飛んだところ、空港では「軍隊が直々にお出迎え」、「税関や入国審査はフリーパス」、「街中は道路封鎖の赤信号無視」など、国賓級のもてなしにすっかり酔いしれ、全財産を騙し取られたケースもあり、大規模な組織犯罪の印象を受けます。
また、騙されて信用保証金を振り込んだイギリスの実業家が、取引がそれ以上進行しないことを不審に思い、直接ナイジェリアまで乗り込んだところ、入国直後に行方不明、数日後に射殺体で発見されたなどの凶悪なケースもあります。

この類の国際詐欺は通称「419事件」と呼ばれており、日本の警察も関心を持っているようです。しかし相手国がナイジェリアのように政情不安であったり、詐欺グループが多国籍である場合には国際警察の力が及ばない事が多く、打つ手がないのが現状のようです。

これら419事件については外務省もホームページから注意を促しています。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/anzen/other/129.html


一体何を考えてメールをよこしたのでしょうか? 曲がりなりにも危機管理を扱う警備会社を騙せるとでも思ったのでしょうか? 舐められたものです。

何よりも腹が立つのが、コストの問題。
小技の効いた(=わざわざ難しい単語を使う)商用英語を読破するのに15分、25億円に目が眩むこと3分、分析と不審点の洗い出しに10分、調査から詐欺と断定するまでに20分と、貴重な1時間を割かれただけでも頭にきます。

しかし、怒りに任せて仕返しなどするのは時間の無駄ですし、危機管理の基本は無駄なトラブルの発生を予防することです。
美味い話には必ず「裏」があります。客観的に分析・評価するだけでも自ずと怪しい部分が見えてきます。「直感」や「希望的観測」などの根拠のない観点で「怪しい点」を黙殺さえしなければ、このように稚拙な詐欺に引っかかることはないでしょう。


相談事例 (加筆:2003年6月9日)
2003年6月現在、同類のトラブルについてのご相談を多く受け付けています。
個々のケースに共通する点を指摘し、展開を予測してみます。参考にしてください。

最近の事例で多いのが多国籍企業の現地日本支社を狙うケースで、電子メールやFAX、封書からアプローチしてきます。
内容は、

政府高官の秘書または代理人を名乗る
巨額(500万〜5000万ドル)の投資話を持ちかける
他の投資話に触れる
「興味があれば連絡して欲しい」と締めくくる

これらは古典的な詐欺手順です。
まず自分が信用できる人間であると錯覚させ、投資金額で目を眩ませ、他の投資話で競争心を煽り、締めくくりの文言でターゲット企業が積極的になるよう誘導するという手口です。

返事をすると即日で回答があり、担当者を名乗る者とホテルなどで面会、しくしくと交渉が進みターゲット企業の責任者も同席し商談が成立します。
商談成立後には契約に関わる信用保証金と称して大金を納めさせ、受け取ると同時に姿を消すケースがほとんどですが、投資金について全額を銀行でなく「信頼できるセキュリティー会社」に保管してあるなどと言い、安全のために社長(ターゲット企業の責任者)が直々に取りに来いという内容で引き渡し条件を提示してくることもあります。もちろんこのセキュリティー会社は詐欺グループの作ったダミー会社です。過去の事例では、のこのこと受け取りに行った多国籍企業の現地幹部社員が拉致・監禁され、営利目的の身代金誘拐に発展したケースもあります。

ほとんどの件案に共通する対応策は相手にしないことです。
詐欺グループには調査能力があるわけではなく、インターネットや四季報などからターゲット情報を集め、業種を問わず不特定多数の企業にアプローチし、蜘蛛のように網を張っているている印象を受けます。特定の企業の資産状況や特定の取引情報を知っている可能性は低いため、最初のアプローチメール・FAXを無視すればほとんどのケースで二度と連絡してこなくなります。
最近ではナイジェリア政府のレターヘッド入り便箋(偽造)を使用したりと手口が巧妙化しているようで、「最初のアプローチに回答をしてしまった」「商談中である」などの相談を多く受けます。この場合も、もっともらしい理由をつけ商談自体を止めてしまえばよいでしょう。それでも面会を要求してきたり、幹部社員の自宅まで来たりと手を変え品を変えアプローチしてくるようなら注意が必要です。これらは詐欺グループが貴社に対して必要以上に興味を持っている兆候です。詐欺グループに組織力がある場合は営利誘拐などの可能性も捨てきれないため、

社屋のセキュリティを強化する
日本人スタッフへのセキュリティを強化する
社長については自宅警備に加え、出社と帰宅時を重点的にセキュリティを強化する

などの基本的な施策を実施し、可能であれば貴社を中心とした環境全体のセキュリティの強化を図ることを重点にシステム全体を見直されることをお奨めします。
具体的な対応策の提案については、現状評価と合わせて有料コンサルトからサポートしています。「無料相談」から相談してください。
※無料相談